「運命」にご用心

おろち [DVD]おろち [DVD]
(2009/03/21)
木村佳乃、中越典子 他

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ホラー映画はたいてい眠れなくなったりお風呂に入れなくなったりするので見ないが、
一人で見てしまった。
でも、意外にも期待を上回った内容で良かった。
グロい描写もそこまでないし、無駄に気持ち悪い展開で脅かそうとくる肝試し要素がない。

楳図かずお原作の漫画、「おろち」の実写映画。
描かれているのは、「恐怖」とはいえども、お化けや呪いなんかじゃなくて、
「人間」そのもののリアルな怖さ。
原作の漫画はまだ読んでいないのだけど、読んでみようかな。

そもそも、京都に行ったとき、「おろちに似てますね」と言われたのが
「おろち」が気になり始めたきっかけという…。
「おろち」は、人間の運命をただ見守っているだけの、不思議な力を持つ女の子。

ネタバレするので、感想を隠して書きます。とても長いですが、読みたい方だけどうぞ↓
「おろち」が見つめるのは、仲の良い門前家の二人姉妹。
姉妹の母親である葵は世にも美しい女優で、トップスター。豪邸での裕福な暮らし。
しかし、門前家の女は皆、ある宿命を背負っていた。
29歳になると、今までの神々しい美貌が崩れ果て、見るも無残な化物になっていくのである。

母親の葵も、例外ではなくその事象が発生し、引退を余儀なくされたあと、
禁断の「上の部屋」に隔離され、鎖でつながれ、信じがたいほど醜い姿で悲惨な余生を送る。

そんな母親の悲惨さを見ていた姉妹は美しく成長しつつも、
いつか来る29歳の運命に怯えている。

しかし、母は死ぬ直前に妹にある「秘密」を明かす。
「秘密」を握った妹は、姉に告げる。「姉だけが門前家の人間で、私には門前家の血が通っていなかった」と。
妹だけ29歳を迎えても美しいままだなんて許せないと姉は発狂し、
炎で熱した鉄で自らの美しい顔を焼いてしまう。

しかし、そこで妹は衝撃の告白をする。
「本当は、妹の私だけが門前家の人間だった」という真実と、心に秘めていた思いの暴露。
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「変わり果てた母」の姿の顔がドロドロな描写が強烈なインパクトを残すが、
むしろそれによって「29歳での変貌」に対する恐怖にじりじりと追い詰められる。

さらに追い討ちをかけるように、嘘をついて姉を発狂させ、孤独に陥れた妹の「人間」らしさ。
しかし、この妹の心情を考えたとき、果たして「姉に対する嫉妬」「29歳の変貌に対する恐怖」
だけなのか?ということを考えたい。

幼い姉妹は、本来は仲が良かったのだ。
そして、母である葵は、どちらかというと実子でない姉の方に辛くあたった。
しかし、それは裏を返せば、妹と違って美しいままである姉に対する「期待」でもあった。

この妹が姉を陥れた最大の理由は、「愛情に近い感情に対する飢餓」ではないのか?と思う。
いつも一緒にいた姉妹でありながら、「姉とは違う運命」に一人で向かっていく恐怖。
門前家の女でなければ味わうことのない苦しみを、
姉にそのまま擬似的になすりつけ、発狂する姉を近くで見つめることで、
自分自身の逃れ難い悲しみを分かち合って欲しかったのではないか?

この妹は、おそらく「門前家の子供が姉なら良かったのに」とは感じていなかったように見え、
「門前家という呪わしい運命を二人で共有したかった」ように映る。
発狂した姉にいくら酷い虐待をされても、妹はただひたすら耐えるのだ。痛みを分け合うように。

「おろち」はこの家の女たちの「運命」を見つめ、人知れず去っていく。

「運命」とは、本来孤立したものであるはずだ。
しかし、人間は自分の「運命」が、あたかも誰かと結び合わされているかのように思いたがる。
誰ともつながっていない「運命」に、恐怖を覚える。
「運命共同体」という恐ろしい概念は言い換えれば友情であり、恋愛であり、家族であり、組織である。

門前家の妹の「運命」も、元々は妹が一人で背負うべきものだった。
しかし、それに耐えられなかった妹の強い願いに無意識に呼応するように、
いつまでも美しくいられたはずの姉が、自分の顔を焼いて永遠の傷を残し、
結果的に妹の「運命」に巻き込まれ、身を捧げる。

四方八方から触手を伸ばしてくる無数の「隣人の運命」こそが、人間を狂わせる、一番コワいものである。
冷静に「運命」を俯瞰できるのは、「おろち」だけなのかもしれない。
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プロフィール

菊池ともか

Author:菊池ともか
Twitter:tomoka_slvjet
夢見がちギタリスト&歌うたい。
1988年2月3日生まれ。AB型。
東京都出身。
10代半ばからギターに夢中で
様々なバンドにギタリストとして参加。
現在はソロプロジェクト
"Folk Rock Express"進行中。
愛用ギターは銀ラメのグレッチ・シルバージェット!
アコギはマーチンの000-15M☆

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